2010年 01月 29日
LUXEに見るイケてるガイドの原則 |
数年前には、iphone, ブラックカードと並んでリッチな若者のマストアイテムと言われておりました。ちなみにここでいうリッチとは、年収が数千万円とかそういう話でなく、「お父様が上場企業の創業者」とか、「代々続く医者の家系で本人は美容整形で億万長者」とかそういう方々らしい。リアル桁違い…。
話が逸れましたが、このガイドを売ってる店舗自体もあまり多くなく、本体もちっちゃいため見つけるの自体が困難だったんですが発見。試しにシンガポールのを買ったわけです。外装と大きさは以下。
これがなかなか良かったのでポイントをまとめておきます。
1. ガイドブックの基本に立ち返ったコンセプト
1.1) 必要な情報が簡潔に載ってる
絵とか写真一切なし。レストラン、ホテル、サービスアパートメント、など旅のカギとなる場所とお勧め移動手段など基本情報だけ。電話番号と住所、あと皮肉たっぷりの紹介分。全部で二行。でも、これでいいと思います。だって、目的地まで"ガイド"してくれてるわけだし、その先で味やサービスを楽しむのは着いてからすることでしょ。これは編集者への強い信頼の上に成り立ってるわけですが。
毎年ブランド名に胡坐をかいて、内容や構成がほとんど変わらないコンパクト六法みたいな厚さのガイドブックが何冊も出てるわけですが、それらとはかなり違う。「とりあえずここ行っとけ、面白かったから」みたいな、遊びなれた友達に気軽に聞くような使い方を想定してる。
1.2) 持ち運びにいいサイズ・汚れること前提の表面加工
シャツのポケット、パンツのポケットにぴったりサイズ。あと、ウォータープルーフなんです。紙もかなり上質の物を使っていて、なかなか折れない。この二点は、特にどこに書いてあるってわけじゃないんだけど、自分で試して判明しました。持ち運びやすく、タフなので、とりあえず持っとけばなんとかなる。
LUXEのターゲットが「下調べとかするほどじゃないけど、数日間の滞在を楽しく過ごしたい」って層ってのと、発行されてるのが治安や言語(英語)の自由さが担保された都市であるという前提はありつつも、そういう場所に関しては無駄を省くとこうなるという一つの理想形では。
2. 全体のノリがお茶目で洒落ている
どうやら出版社がイギリスにあるというのも影響してそうですが。
たとえばイントロの部分を例にとりましょう。ここは、その都市を回る上でのTipsとか国の概要があります。シンガポールではSinglishについて書かれてます。以下抜粋。
These SINGLISH phrases will have you taking like a local...訳すと。
Hello, lah/Bye-bye, lah : Hello/Goodbye
Don't talk cock, can? : Would you mind not talking such rubbish?
以下のような”シングリッシュを使うと、現地の人が話しているような雰囲気が出ます…19世紀までイギリスの植民地だった歴史とか考えると、笑っていいのか微妙だけどね。ホテルとか紹介する時も全体的にこんなノリです。あと、デザインおされ。
Hello, lah/Bye-bye, lah : こんにちは/さようなら
Don't talk cock, can? : そのクソ英語、やめてもらえます?
3. 絶妙な店のセレクションと微妙な紹介の仕方
言ったことのあるホテル・お店が二つしかなかったので判断しかねますが、ブログや書籍の評判を見る限りハズレのないガイドブックとして定評があるらしい。
3.1) セレクションについて
①王道、②「よくそんなとこ知ってるな!」という若干パンチの利いた場所、この二つのバランスがよく取れているということみたい。逆に、どちらにも入らない中途半端なお店はリストにない。ちなみにすべてが高級店では決してないです。そういうのはミシュランとかに任せとけ的。
3.2) 紹介文のノリと効能
数少ない知っている掲載店の一つに先日エントリーしたDin Tai Fungの紹介文。
Infamously tasty Taiwanese noodles and dumplings. The local love it and it's a total bloody bun-scrum here at the weekends, so flight for it, Fiona.意訳ですが、訳すと。
名うてのメチャウマ台湾麺&蒸し物の店。現地の人達にファン多し。週末は団子頭の連中(中華系の人が多いため、結えている髪を指しているものと思われる)の群衆であふれかえること間違いなし。これねー、多分悪意とかないと思います。LUXEはロンドンにもあるけど、きっと同じノリで自分たちのこと皮肉ってると思う。…と、彼らに合わせてレンズを逆屈折させて読むと楽しい。
で、少なくともスポンサー広告とか取りながら書いているグルメガイドとかみたいにべた褒めとかなくてこういう書き方なので、お店の個性がしっかり伝わるんです。これはポイント高し。で、さらに副効果。突っ込みを入れられている分、期待値が「ちょっと見といてやろう」レベルにとどまる。結果、あまり良くなかったとしてもがっかりしない。紹介文の皮肉は、優しさなんです。
ということでLUXEから学ぶイケてるガイドブックの原則講座でした。
遊びに来た友人の方々はこのガイドに基づき案内しますのでそのつもりで。
by hamp-stead
| 2010-01-29 02:59
| ①マーケ・経営